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東京高等裁判所 平成11年(行ケ)423号 判決 2000年5月31日

大阪府東大阪市荒川3丁目10番7号

原告

株式会社藤商事

代表者代表取締役

土谷敬一

訴訟代理人弁理士

谷藤孝司

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 近藤隆彦

指定代理人

廣田米男

馬場清

小林和男

主文

特許庁が平成11年異議第70008号事件について平成11年11月5日にした決定を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

主文と同旨

2  被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

(一)  原告は、名称を「弾球遊技機の制御装置」とする特許第2772921号発明(平成6年8月31日特許出願、平成10年4月24日設定登録、以下「本件発明」という。)の特許権者である。

アルゼ株式会社らは、上記特許につき特許異議の申立てをし、特許庁は、この申立てを平成11年異議第70008号事件として審理したうえ、平成11年11月5日、「特許第2772921号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。)をし、その謄本は、同月22日原告に送達された。

(二)  原告は、平成12年2月9日、本件発明の明細書を訂正する旨の訂正審判の請求をしたところ、特許庁は、同請求を訂正2000-39022号事件として審理したうえ、平成12年3月30日、上記訂正を認める旨の審決(以下「訂正審決」という。)をし、その謄本は、同年4月19日原告に送達された。

2  訂正審決による訂正前の特許請求の範囲の記載

(一)  請求項1

遊技盤(5)に複数個の図柄表示部(23)(24)(25)を備え、遊技球が始動ゲート(20)に入った時に乱数処理手段(31)の乱数処理により各図柄表示部(23)(24)(25)の図柄を変動させて、各図柄表示部(23)(24)(25)の停止図柄が所定の当たり図柄の組み合わせになった当たり時に利益を還元するようにした弾球遊技機において、遊技盤(5)に、前記各図柄表示部(23)(24)(25)と異なる画像を表示する画像表示手段(18)を設け、始動ゲート(20)に遊技球が入球する毎に、画像表示手段(18)がその時の前記乱数処理手段(31)の乱数処理条件に応じた画像を表示するように該画像表示手段(18)を制御する制御手段(33)を備えたことを特徴とする弾球遊技機の制御装置。

(二)  請求項2

遊技盤(5)に複数個の図柄表示部(23)(24)(25)を有する変動図柄表示手段(17)を備え、遊技球が始動ゲート(20)に入った時に乱数処理手段(31)の乱数処理により変動図柄表示手段(17)の各図柄表示部(23)(24)(25)の図柄を変動させて、各図柄表示部(23)(24)(25)の停止図柄が所定の当たり図柄の組み合わせになった当たり時に利益を還元するようにした弾球遊技機において、遊技盤(5)に、前記変動図柄表示手段(17)の各図柄表示部(23)(24)(25)と異なる画像を表示する画像表示手段(18)を設け、始動ゲート(20)に遊技球が入球する毎に、画像表示手段(18)がその時の前記乱数処理手段(31)の乱数処理条件に応じた画像を表示するように該画像表示手段(18)を制御する制御手段(33)を備えたことを特徴とする弾球遊技機の制御装置。

(三)  請求項3

始動ゲート(20)に遊技球が入球した時の乱数を、当たり図柄を表示させる当たり乱数と、当たり図柄と関連する関連図柄を表示させる関連乱数と、これら当たり乱数及び関連乱数以外の外れ乱数とに分け、画像表示手段(18)に、当たり乱数の時に当たり画像、関連乱数の時に当たり画像と関連する関連画像、外れ乱数の時に当たり画像及び関連画像以外の外れ画像を夫々表示させる制御手段(33)を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の弾球遊技機の制御装置。

(四)  請求項4

所定条件の下で関連乱数となる都度、画像表示手段(18)に特定順序で関連画像を表示させる制御手段(33)を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の弾球遊技機の制御装置。

3  訂正審決により訂正された後の特許請求の範囲の記載

(一)  請求項1

遊技盤(5)に複数個の図柄表示部(23)(24)(25)を備え、遊技球が始動ゲート(20)に入った時に乱数処理手段(31)の乱数処理により各図柄表示部(23)(24)(25)の図柄を変動させて、各図柄表示部(23)(24)(25)の停止図柄が所定の当たり図柄の組み合わせになった当たり時に利益を還元するようにした弾球遊技機において、遊技盤(5)に、前記各図柄表示部(23)(24)(25)と異なる画像を表示する画像表示手段(18)を設け、始動ゲート(20)に遊技球が入球する毎に、画像表示手段(18)がその時の前記乱数処理手段(31)の乱数処理条件に応じた画像を表示するように該画像表示手段(18)を制御する制御手段(33)を備え、始動ゲート(20)に遊技球が入球した時に発生する乱数を、当たり図柄を表示させる当たり乱数と、当たり図柄と関連する関連図柄を表示させる関連乱数と、これら当たり乱数及び関連乱数以外の外れ乱数とに分け、制御手段(33)は、画像表示手段(18)に、当たり乱数の時に当たり画像、関連乱数の時に当たり画像と関連する関連画像、外れ乱数の時に当たり画像及び関連画像以外の外れ画像を夫々表示させ、所定条件の下で関連乱数となる都度、画像表示手段(18)に特定順序で関連画像を表示させるようにしたことを特徴とする弾球遊技機の制御装置。

(二)  請求項2

遊技盤(5)に複数個の図柄表示部(23)(24)(25)を有する変動図柄表示手段(17)を備え、遊技球が始動ゲート(20)に入った時に乱数処理手段(31)の乱数処理により変動図柄表示手段(17)の各図柄表示部(23)(24)(25)の図柄を変動させて、各図柄表示部(23)(24)(25)の停止図柄が所定の当たり図柄の組み合わせになった当たり時に利益を還元するようにした弾球遊技機において、遊技盤(5)に、前記変動図柄表示手段(17)の各図柄表示部(23)(24)(25)と異なる画像を表示する画像表示手段(18)を設け、始動ゲート(20)に遊技球が入球する毎に、画像表示手段(18)がその時の前記乱数処理手段(31)の乱数処理条件に応じた画像を表示するように該画像表示手段(18)を制御する制御手段(33)を備え、始動ゲート(20)に遊技球が入球した時に発生する乱数を、当たり図柄を表示させる当たり乱数と、当たり図柄と関連する関連図柄を表示させる関連乱数と、これら当たり乱数及び関連乱数以外の外れ乱数とに分け、制御手段(33)は、画像表示手段(18)に、当たり乱数の時に当たり画像、関連乱数の時に当たり画像と関連する関連画像、外れ乱数の時に当たり画像及び関連画像以外の外れ画像を夫々表示させ、所定条件の下で関連乱数となる都度、画像表示手段(18)に特定順序で関連画像を表示させるようにしたことを特徴とする弾球遊技機の制御装置。

(下線部分が訂正個所である。なお、訂正前の請求項3及び4は、その構成要件が上記下線部分として訂正後の請求項1及び2の中に取り込まれたため、請求項1及び2と別個の請求項としては削除された。)

第3  当事者の主張の要点

1  原告

本件決定が、本件発明の要旨を訂正前の特許請求の範囲記載のとおりと認定した点は、訂正審決の確定により特許請求の範囲が前示のとおり訂正されたため、誤りに帰したことになるので、否認する。

本件決定が本件発明の要旨の認定を誤った瑕疵は、その結論に影響を及ぼすものであるから、本件決定は、違法として取り消されなければならない。

2  被告

訂正審決の確定により特許請求の範囲が前示のとおり訂正されたことは認める。

第4  当裁判所の判断

訂正審決の確定により特許請求の範囲が前示のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく、この訂正によって、請求項3及び4が再構成され、請求項1及び2に新たな構成要件が付加され、以上を通じて本件発明の特許請求の範囲が減縮されたことは明らかである。

そうすると、本件決定が、本件発明の要旨を訂正前の特許請求の範囲記載のとおりと認定したことは、結果的に誤りであったことに帰し、この要旨認定を前提として、上記発明中訂正前の請求項1ないし3に係る部分が、特開平6-170049号公報記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと判断したことも誤りであったといわざるを得ない。そして、これが本件決定の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、本件決定は、瑕疵があるものとして取消しを免れない。

また、本件決定が訂正前の請求項4に係る特許を取り消した点については、訂正審決により同請求項は削除されていることから、本件決定中、その取消しをいう部分も誤りに帰したというべきである。

よって、原告の請求は理由があるから認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 長沢幸男 裁判官 宮坂昌利)

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